夢ラン~笑顔×世界翔ける自転車~

これは21歳大学生が笑顔とともに世界一周する物語です

Day13(1) 生と死と人

3/17
High camp-Throng ra pass(トロンパス)-muktinath
11km
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朝は4時半起き。
昨日宿泊している皆がその時間に朝食を食べるというので行ってみると既にたくさんの人がご飯を食べていた。

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朝食はモーニングセットにしてみた。
卵ふたつとチベットブレッドとポテト。それに好みのドリンクの組み合わせなのだが、お腹を壊している僕にとって卵とチベットパンの揚げ物ダブルコンボは流石に効いた。
 
トイレに何度も行ったりしていたら出発は5時半すぎ。この頃にはハイキャンプに泊まっていた人達は僕をのぞいて一グループになっていた。
しかし自転車を担いでいると抜かされる時されるのにも重労働なのでまぁよし。
 

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標高5416m
目指す頂上のトロンパスまでは3km600mup
今までで一番辛いのは分かりきっていたが、さらに僕を苦しめる追加要因がふたつ
 
まずひとつが登山路が人一人ギリギリ通れる幅しかなく、かつその両脇の雪壁はかなりの高さがある
昨日まで同様自転車を押して歩くには狭すぎた。初めは押していたか、左側の崖を歩く時何度も自転車が雪に引っかかり進まず、僕は何度も何度も滑落しかけた。
 
もうひとつは道が平らではないこと。
昨日まではタイヤの力を借りて自転車を押している方が肉体的労力は小さかった。
しかし何度も歩き、踏み抜いた足跡によりタイヤが何度も何度も止まり、持ち上げる必要に迫られた。かつ雪壁に突っ込み進まない。
 
もう一つ最大の問題があるのだが、後に致命傷を与える要因となるため後で話す。
 
とにかく、おかげで昨日よりもさらに進むペースは落ち、1.2km下のトロンフェディからトロンパスを目指す人達にもごぼう抜きされた。
 
 
 
半分を過ぎたくらいだろうか。ついに禁断のパッキングを解放する

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自転車背負いである
 
バックパックの三本の紐と荷紐の計4本でバックパックに自転車を括りつけて、全ての荷重をその肩に託して担いでいく。
 
総重量約35kg
壊れかけ且つサイズのあっていないバックパックは胸紐も壊れていて、その35kgの重さを直で体に受けることになる
 
道幅の狭い問題や、道が平らではない問題は解決したものの新たなる問題が出てくる

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まず気軽に休めない。
きちんと休むには全ての荷物を下ろすのだが、このように後ろに下ろすと重心が後ろに寄りすぎて立てない。
なので最終的に登山道の壁に自転車をかけ、登山路に体を沈めてうつ伏せで休むという、他の人から見たらこいつ死んでるんじゃないか?と思わせるような休み方をした。

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もうひとつは立ち上がる時の労力が凄まじいということ。
35kgを持ち上げる力というのは半端ではない。立つだけで足の力が一気に奪われ、腰が砕け散る。
 
結局体を90度まげたまま立っているのが小休憩になった。
 

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こう写真を見返してみると雲量0のど快晴だったことが分かる。
 
 
…しかし身体は雪山にどんどん蝕まれていく

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何度も何度も立ち上がる度呼吸は荒く、体が動かなくなっていくのを感じた
 
高山病になる二大要因は水不足と酸素不足である。
…が、これを意図せず見事にコンプリートした
 
前半自転車を担ぎあげていたとき、の最大の問題は呼吸ができないことだった。
20kgの自転車を持ち上げて移動するのはベンチプレスのようなものである。
つまり運んでいる間は無酸素で移動し、限界が来てから自転車をおろし、一息つく。
 
当然酸素は足りない。呼吸はみるみる荒くなる。

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さらに当然気温は氷点下。
2リットル組んできた水はみるみるこおり、液体を飲みきってしまったが最後、氷のみとなったら全く溶けない。
水と一緒ならば多少は溶けやすいが、道中水をけちる余裕なんてなかった。
そうして全ての水が凍った。
 

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さらに前半自転車を担ぎあげていたが、そのためには手に力を入れる。
何度もこれを繰り返すと血が鬱血し、指先の感覚がなくなる。序盤は休憩の度に指を手のひら部分に折りたたみ、温め血がめぐるまで待つことで解決していたが…

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立ち上がる時に当然手を地面につけるのだが、雪がまとわりつきグローブが凍る。
内側も外側も氷づけになり、がちがちに固まる。
これにより指を折りたたんでも指先の感覚は戻らなくなった。
 
ゲイターをつけている足もローカットシューズのためか多少浸水していて足指先の感覚もなくなった。
 
 

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それでも何とか上の山が無くなり、頂上が近いところまで来たかと思ったが…

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なんどこの雪山を越えても次の雪山が現れ、アップダウンを繰り返す。
 
酸素不足。水はなし。手足の先の感覚なし。
荒くなる呼吸。まず頭痛。肩と腰を始めとした身体は限界。
だんだん足も動かなくなり、目の前がだんだん薄暗くなるのが分かった。
 
そしてついに道脇の雪にうつ伏せになって倒れた。
 
これが死なんだと分かった。
 
 
”この世で絶対が必ずつくものは”死”である”
 
幼い頃母親が教えてくれた言葉だ。
正確には母の先生らしいが。
人間は必ず死ぬ。それもいつ死ぬかなんて誰にも分からない。明日死ぬかもしれない。
なら、一瞬を無駄にせず今を全力で生きようと決めていた。
 
80歳まで生きても、自分の望む生き方を何も考えず、寝てゲームをして食ってまた寝るという繰り返してもなにも生み出すことの出来ない生活を繰り返すのならば、毎日行動し、挑戦し、自分の理想に向かって走り続けたいと思っている。仮に30歳。夢半ばで死んでしまったとしても、挑戦の中で死ねるのならそれでも、生産性のない生活を80まで繰り返すよりよっぽど濃い人生であったと言えるのではないだろうか。 
 
つまり全力で生きるのなら早死しても一向に構わないと思っていた。
だから常に夢をおいかけ生きていた
 
…そして今、挑戦の中で死ねる。
正直満足だった
 
 
死ぬ瞬間というのは覚悟するのかと思っていたが、そうでも無いらしい。自分の呼吸しか聞こえず、雪に着けた左頬がだんだん冷たくなるのを感じた。
 
そして、地元のみんな。水泳部のみんな。チャリ部のみんなが、ぱっと思い浮かんだ。
 
…その時僕は少し笑っていた
 
 
 
 
 
 
 
 
…どれだけの時間が過ぎたかは分からない。
昨日トロンフェディで出会った7歳の娘とお母さんの2人組が倒れていた僕の横を通り過ぎた。
 
すると僕にお母さんが声をかけた。
…というか怒鳴っていた
 
”お前はめちゃくちゃクレイジーだけどこんな所で死ぬな!!!”
あと80m登ればトロンパスだぞ!

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そして僕は再び立ち上がった。
意識は朦朧とし、視界もぼやけていたが、それでも僕は再び歩き出した
 
火事場の馬鹿力も使い切った体のエネルギーの絞りカス一滴一滴をつかって歩みを進めた
 
…7歳の娘が僕に向かって両手を降っていたのが見えた。
ゴールが見えたことを伝えてくれたんだとわかった。
 

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標高5416m。豪雪のトロンパスに自転車を持って到達した。
High camp出発から実に7h後の事だった
 
気が抜けたのか再びその場にうつ伏せになって倒れる。
本当に苦しい挑戦を達成した瞬間は当然嬉しく、二年前ニュージーランドの世界一の激坂ボルドウィンストリートを登りきった時は人生で一番のガッツポーズをしたが、絞りカスすら使い切った僕には嬉しくても拳を振り上げる力すら残ってなかった。
 
しばらくして、何人かが手伝って持ち上げてくれた。
”スーパーヒーロー!いっしょに写真撮ってくれよ!!”

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みんな、道中で出会った人達。真ん中が7歳の娘で右下がそのお母さんだ。
 
その後、みなが祝福してくれた。
”最高にクレイジーな日本人だ!おめでとう”
”感銘を受けたよ!お前やべーな!”
男の人たちと拳と拳を合わせる。
 
最後にお母さんが
”今日の主役は間違いなくお前だよ。本当におめでとう” 
 
抱きしめてくれた
 
さっきあんなに怒ってたのに
 
 
みなが下っていった後、お茶飲む?と言われた。
僕は横にあった小屋で暖かいマサラチャイを貰った。気づけば、内側までガチガチに凍りついたグローブをバーナーで温めてくれていた。
 
 
急にめちゃくちゃ涙がこぼれてきた
みんな死にかけた僕を祝福し、優しくしてくれて、抱きしめてくれた。
さっきまで一人地獄の中戦っていたのに。
思い出した人達に、また、会える。
 
…おれ、人が好きなんだ
 
暖かいチャイを握りしめながら涙がバレないように暗い室内でサングラスをかけながら温まっていた
 
 
 
体が動くくらいになったら荷物をまとめ直して写真を撮った

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雪が積もりすぎていて看板が全て見えない。
…それでも、これが撮りたくてここまで来たんだ
 

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天気は相変わらず快晴。僕を祝福してくれているようだ。

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そして、小屋の人たちに別れを告げて下っていく。
 
 
 
下りながら、今日一日のことを思い出していた。
 
大事なみんなを思い出した。
みんなが見ず知らずだった僕を祝福してくれた。
みんなが優しくしてくれた
 

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この景色を見た時もう一度めちゃくちゃ泣いた。
 
 
おれ、生きててよかったなぁ
 
 
まだ、この世にやり残したことがある。
 
 
【続く】
 

https://www.instagram.com/p/B95BYiyBZho/

.2020.03.17.自転車アンナプルナ一周標高5416mトロンパス登頂 豪雪の5000m超への自転車担ぎあげに本気で死にかけました。一緒に登ったみんなが僕のことをスーパーヒーローと呼んでくれました。ありがとうみんな、ありがとうそら。この日を一生忘れません!!.I'm japanese crazy bicycle men! I succeeded to crimbed throng la pass (altitude 5416m) with my bicycle!!If you see this posting, I want to say thanks to everyone who climbed together. I was able to climb thanks to your support!Thank you my friends!! See you again!.#smaileciyrcle #aroundtheworldtrip #bicycletrip #Nepal #ネパール #ネパールラン  #annapulna #aroundannapulna #Panasonic #パナモリ #sonyα7 #ファインダー越しの私の世界 #annapurnacircuit #annapurna #thronglapass #bicycletravel #bicyclejourny.死にかけたのは本当で、ドラマのような話で生還したので投稿したらぜひブログも読んでください〜